本学歯学部小児歯科に受診者のうち,研究への参加について保護者の同意が得られた小児において,身長および体重の測定を行い,各年齢に応じた成長発育指数をもとに肥満の評価を行った.その後,提供いただいた唾液サンプルから DNA 抽出キットを用いて細菌 DNA を抽出し,歯周病原性細菌 10 菌種およびう蝕の主要な病原菌である Streptococcus mutans に特異的なプライマーを用いた PCR を行い,各菌種の保有率に関して分析を行った.その結果,肥満傾向の小児群において,いくつかの歯周病原性細菌種の保有率が高い傾向を示した.また,非アルコール性脂肪肝炎マウスモデルを用いた分析の結果では,菌体表層のコラーゲン結合タンパクおよびProtein Antigen(PA)タンパクの両方を発現している S. mutans 株をマウス頸静脈より感染させると,肝臓での脂肪の蓄積および炎症性細胞の浸潤および局所の線維化を生じることが明らかとなった.一方で、そのタンパクが1つでも欠落した株では、脂肪肝炎の悪化を生じないことが分かった。さらに,肝臓組織のマイクロアレイ解析から,アポリポタンパクおよびインターロイキン,インターフェロンガンマに関連するサイトカインの発現の上昇が認められ,病原メカニズムとの関連が示唆された.次年度も臨床サンプルの解析および非アルコール性脂肪肝炎マウスモデルを用いて,様々な視点から口腔細菌が関与する小児肥満における病原メカニズムの解析を進めていく予定である.
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