研究実績の概要 |
平成28年度では、過度な伸展刺激を負荷したラット下顎頭由来培養軟骨細胞におけるエストロゲンレセプター(ERa)の発現とシグナル経路について検討を行った。下顎軟骨細胞を播種し、ERaのアンチセンスオリゴヌクレオチドを遺伝子導入し、ERa発現が抑制されていることを確認した。さらに、アンチセンスオリゴヌクレオチドおよびタモキシフェン存在下/非存在下で機械的伸張刺激を負荷したところ0.01M以上のE2 によるCOX-2, MMP-3発現の上昇を抑制することが明らかとなった。したがって、0.01M E2によるCOX-2およびMMP-3発現にはERaが関与している可能性が考えられた。次にE2添加/非添加で機械的伸長刺激を負荷し, NF-kBの活性の変化をELISA法およびWestern blot 法にて分析したところ、NF-kBのリン酸化および活性の亢進が認められた。その一方、ERaの発現を抑制したところ、E2によるNF-kBの活性上昇は認められなかった。これらの結果から、機械的伸張刺激を負荷した条件下での高濃度E2によるCox-2およびMMP-3発現上昇はERaおよび NF-kBを介して亢進されている可能性が示唆された。 次に過度な機械的伸展刺激を負荷したラット下顎頭軟骨の軟骨基質代謝にエストロゲンが及ぼす影響について検討した。ラット下顎頭軟骨を摘出し、下顎頭の器官培養を行い、E2添加/非添加で機械的伸展刺激を負荷後、縦断切片を作製した。負荷群およびE2添加群において軟骨組織のトルイジンブルー染色性低下が認められたが、顕著な差は認められなかった。ERaの発現分布は、下顎頭軟骨の深層に最も多く発現が認められたが、負荷群およびE2添加群においても同様の発現分布が認められた。
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