現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
小児口腔内より分離したS. mutans が形成するバイオフィルム内における齲蝕関連遺伝子のmRNA 発現量と齲蝕重症度との関連を検討することを研究の一つの目的としているが,現在までに,ガラス試験管を用いてバイオフィルムを形成させる実験を遂行することができた。しかし,平成25年度内にフローセルシステムを利用したバイオフィルム形成の実験系を構築する予定であったため,研究の達成度に遅れが認められる。今後,フローセルシステムを利用した実験系を構築し,臨床分離S. mutans の齲蝕関連遺伝子発現量や不溶性グルカン合成能と齲蝕重症度との関連を検討する。
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今後の研究の推進方策 |
今後行うバイオフィルム形成実験において,フローセルシステムを利用した流体での実験系を構築することにより,口腔内の条件に近似させた環境下でバイオフィルムを形成させ,齲蝕関連遺伝子の発現と齲蝕重症度との関連性を検討する。検討する齲蝕関連遺伝子として,これまで検討してきたglucosyletransferase B 遺伝子(gtf B)および耐酸性機構に関与するF-ATPase のβ-subunit であるatpD に加え,quorum sensing 機構に関連する遺伝子を標的とする。また,培養上清からタンパクを塩析し,不溶性グルカン合成能を検討する。これらは酸性環境や糖添加状態など環境を変化させて行い,環境変化により齲蝕関連遺伝子発現量や不溶性グルカン合成能にどのような変化が及ぼされるか検討する。 また,臨床において齲蝕予防の観点から使用されているフッ化物やキシリトールが,S. mutans の不溶性グルカン合成能や耐酸性能にどのような影響を及ぼしているのか検討する。 さらに,バクテリオシンやquorum sensing 機構に関連する抗菌ペプチドをS. mutans に作用させて生じる変化を検討する。 以上の実験から得られた結果と齲蝕重症度との関連性を統計学的に検討し,効果的にS. mutans の齲蝕病原性を低減させる因子を明らかにし,個々の口腔内状況や保有するS. mutans の性状に適応した齲蝕予防法の確立へと発展させていく。
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