研究課題
変形性関節症(OA)は、本邦において非常に頻度の高い多因子性疾患であるにもかかわらず、その発症機序に関しては未だ不明な部分が多くなっている。本研究では「成長期における咀嚼環境変化と変形性顎関節症の関連性を解明する」ことを目的とし、幼少期からの軟食化やそれに伴う咀嚼筋力低下といった社会的問題にも焦点を当て、種々の咀嚼環境条件の変化に対する生体の適応状態について電気生理学的手法を用いて解明すべく研究を行っている。当該年度は、咀嚼環境変化として、軟食化を想定した液状飼料飼育モデル、咬合高径増加モデル、鼻閉による咀嚼筋力低下(咬合刺激低下)モデルを作製し、顎関節機械受容器および侵害受容器からの記録、低閾値機械受容器や高閾値侵害受容器によって誘発される三叉神経反射である開口反射の記録を試みた。また並行して上位中枢である大脳皮質一次運動野顎顔面領域からの記録も試みることにより、末梢から中枢に繋がる一連の神経伝達機構について包括的な検討を行った。液状飼料飼育モデルの結果しては、成長期の液状飼料飼育による顎関節負荷を低下させた環境下では、成獣時の顎関節侵害受容器の応答特性が有意に上昇する結果となった。咬合高径増加モデルでは、開口反射の反射特性は一次的に低下し、長期間を経て適応すること、また大脳皮質一次運動野の機能局在も一時的に可塑的変化を示すものの長期間を経て適応することが明らかとなった。また、鼻閉による咀嚼筋力低下(咬合刺激低下)モデルでは、成長期における咀嚼筋力低下が舌の突出力を増大させ、かつ成獣時の開口反射の反射特性を低下させることが明らかとなった。以上の結果より種々の咀嚼環境の変化が、咀嚼運動の機能特性を制御する受容器、反射、中枢に影響を及ぼすことが明らかとなり、咀嚼運動制御の変化に伴い顎関節に大きな影響を及ぼすことが示唆される結果となった。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)
Journal of Applied Phisiology
巻: 118 ページ: 1128-1135
http://dx.doi.org/10.1152/japplphysiol.01152.2014