研究課題/領域番号 |
25862027
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 九州歯科大学 |
研究代表者 |
郡司掛 香織 九州歯科大学, 歯学部, 助教 (90448811)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 歯科矯正学 / 三叉神経節 / サテライト細胞 |
研究概要 |
本研究では歯科矯正治療中に経験的に知られている痛みの中でも、何もしなくて感じる痛みではなく、咬んだときにだけ感じる痛み(咬合痛)の発生機序について調査している。この咬合痛は、矯正治療を行っていない時には感じず、矯正治療中にのみ感じることから、言い換えると知覚過敏とも言うことができ、過去の報告から知覚過敏には末梢神経節のサテライト細胞が関与していることが示唆されていることから、矯正治療時の咬合痛の発生機序について、顎顔面領域の痛みを司る三叉神経節ニューロンへの侵害刺激がサテライト細胞へ伝わり、サテライト細胞が活性化したために起こるのではないかという仮説を調査している。 これまでの結果、末梢刺激としてラットの臼歯を抜歯後に、傷害を受けたニューロンとその周囲のサテライト細胞だけでなく、そこから離れた部位のサテライト細胞が活性化していた。ラット三叉神経節由来のニューロンとサテライト細胞をそれぞれ培養したところ、いずれの細胞でもVNUT免疫陽性発現を認め、またRT-PCRよりVNUT遺伝子発現も認めた。さらに神経傷害後にin vivoでVNUTの発現が増加していたことから、神経傷害後に傷害を受けたニューロンから離れた部位で認められたサテライト細胞の活性化は、傷害を受けたニューロン周囲のサテライト細胞からVNUTを介してヌクレオチドが放出され、離れた部位のサテライト細胞が受け取ることで活性化したのではないかと推察した。 これは離れた場所にある細胞間同士のコミュニケーションの機序を示す有意義な結果で、矯正治療中に患者が感じる「痛み」の発生機序を明らかにし、この痛みを克服する一助となると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ラットに矯正力を与えたときに、咬合痛の評価を行動学的に行うよう計画していたが、行動学的評価で明らかな差を認めなかったため、手法の改良、または他の方法での評価が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
末梢神経障害によるサテライト細胞の変化は認めたが、これがVNUTを介したヌクレオチドの放出によるものかどうかは明らかでない。また、咬合痛の評価が確立できていないため、VNUTと咬合痛との関連も明らかではない。これらを明らかにするために、まずラットにおける矯正的歯の移動時の咬合痛を評価する方法を確立する。その後当初の予定の通りサテライト細胞活性化阻害剤を投与したときの咬合痛の変化を調べる。 また今年度計画分の細胞間コミュニケーションを行っている物質の検索について、計画通り行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定の方法がうまくいかず、代替策を検討するのに時間がかかってしまったため。 昨年度予定の方法を改善し、当初予定より遅れている計画を推進する。また今年度予定分の研究を並行して進める。
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