近年若年性の歯周疾患罹患率は増加傾向であり将来の歯周疾患を予防するためには幼少期からの早期予防が必要であると考えられる。申請者は、妊娠期、出産後の母とその子どもを対象とし、それぞれの唾液を採取しPCR反応による歯周病原性細菌の検出を行った。侵襲性歯周炎の関連細菌であることが明らかになっているA. actinomycetemcomitans は、小児の唾液からは12名中10名で検出された。また、母子ともに検出されたのは12組中10組であった。また母親のみの検出は12名中2名であった。T. forsythia は小児の唾液からは12名中1名検出され、母子ともに検出されたのは12組中1組であった。また、母親のみの検出は2名であった。T. denticolaは小児の唾液からは検出されず、母親のみの検出もなかった。P. gingivalis は小児の唾液からは12名中3名で検出され、母子ともに検出されたのは12組中3組であった。また母親のみの検出は5名であった。今回調べた母子においてはA. actinomycetemcomitans の検出率が高く母子間の伝播の可能性が示唆された。小児での菌検出は、無歯顎や下顎前歯部萌出後継続的に検出される者など様々で、口腔内の歯牙萌出状態や年齢などの統一性の必要があると思われた。新たに対象者を3組の母子に限定しメタ16sDNA解析を行った。解析結果より細菌の多様性は歯の萌出前は小さく、歯の萌出に伴い多様性が大きくなる傾向を認めた。歯の萌出前は3組の子どもすべてstreptococcus属優位であった。母親に多く検出される細菌が子どもの歯の萌出前にみられることは少ないことから子どもの細菌叢は、母親の細菌叢に類似しているとは言い難いようであった。この結果は、PCA解析でも同様の傾向が得られている。サンプルに唾液を使用しているため、プラーク中の細菌叢の検討も必要であると思われた。今後は長期の追跡と使用するサンプルを増やした解析を行う必要がある。
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