う蝕をはじめとする口腔内感染症は、口腔細菌により形成されたバイオフィルム(B.F.)に起因しており、ペリクルへの付着から始まる。また、口腔内 B.F.は薬剤耐性遺伝子のリザーバーであり、従来の殺菌的・静菌的な制御法とは異なる新規 B.F.制御法の確立が望まれている。そこで申請者は、初期付着の阻害という着想に至った。 本研究ではin vitroにおける SspB ペプチドの機能解析を行い、成果をまとめた。 ELISA法、B.F.アッセイを用いて、SspBペプチドのヒト唾液への結合能や、B.F.抑制効果を評価した。 (1) ヒト唾液(濾過滅菌済み)をコートしたELISAプレートに、複数種のビオチン化SspB相同ペプチド(650 μM)を処理した。アルカリフォスファターゼによる発色反応をプレートリーダー (405 nm) にて解析する事で、ヒト唾液との反応性が最も高い390-A393K-T400K-402ペプチドを選別した。 (2) ヒト唾液をコートした細胞接着プレートに、390-A393K-T400K-402を加えた。プレート1 well あたり、20 μl (4.0×104CFU) のS. mutans菌液:180 μlのTSB (without dextrose) 培地を加え、37℃で培養した。形成されたB.F.を染色し、プレートリーダー (492 nm) にて評価した。S. mutansのB.F.形成は、390-A393K-T400K-402により抑制された。 (3) ペプチドに殺菌作用がない事を検証するため、390-A393K-T400K-402、0.04%クロルヘキシジン、無添加、それぞれの条件での細菌の生育を濁度計にて計測した。390-A393K-T400K-402を混入した培養液では、クロルヘキシジンでみられた生育の阻害は生じず、無添加と同等であった。。
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