歯周組織の弾性系線維は機能的な外力を緩衝し、その恒常性維持のため重要な役割を担っており、また全身的にも弾性系線維の異常は大動脈解離や肺気腫などの疾患と密接に関係している。しかし、弾性系線維の形成機構は明らかにされていない。本研究では、弾性線維の一つであるオキシタラン線維が歯根膜で方向性をもって配列することに着目し、細胞伸展装置を用いて凝似的に力学的負荷を受けた歯根膜を再現し、オキシタラン線維の形成と配列の機序、すなわち力学的適応の解明を目指す。これにより線維形成を制御し、歯根膜の機能維持と再生に貢献できる成果が得られると考えられる。 これまで、細胞伸展装置を用いた擬似的歯根膜におけるオキシタラン線維と細胞骨格との解析を行い、二重蛍光免疫染色により、対照群では、線維芽細胞上のオキシタラン線維は細胞長軸と直行する傾向がみられ、実験群では、細胞が再配列し、また凝集したオキシタラン線維束は生体のオキシタラン線維の直径に近似し細胞長軸と直行する傾向がみられた。画像解析ソフトウェアを用いたアングル解析からも、オキシタラン線維の走行は細胞長軸とほぼ直行することが明らかとなった。 追加実験として歯根膜オキシタラン線維の形成機構の解析のため、MAGP-1の役割に着目し、形態学的および生化学的に解析を行った結果、歯根膜オキシタラン線維の形成において、MAGP-1はオキシタラン線維の形成を調節する可能性が示唆された。
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