目的:インプラント周囲炎は,口腔インプラントの予後を左右する主な因子の一つであり,細菌学的評価に基づいたインプラントを含む口腔内の感染管理の充実が求められる.そこで,歯周病原細菌関連検査におけるインプラント周囲炎の予測因子の有用性について検討した. 方法:SPT期治療あるいはインプラントリコール中である,20歳以上の口腔インプラント治療歴があるメインテナンス患者5名(メインテナンス群)とSPT患者10名(SPT群)を対象とした.対象に対して,歯周ポケットとインプラント周囲ポケットの深さを測定し,パノラマX線写真からスクリューに骨吸収が及ぶインプラント(Bone resoption in implant screw:BRIS)の有無を調査した.さらに,歯周病原細菌に対する血漿IgG抗体価検査と歯周病原細菌量の唾液検査(定量PCR法)を行った.結果:BRIS保有患者数が,メインテナンス群よりもSPT群に有意に多かった.P. gingivalisに対する血漿IgG抗体価のcut-off値1.68を用いて陽性者と陰性者間で比較すると,抗体価の陽性者数がメインテナンス群よりSPT群に有意に多かった.また,唾液中の歯周病原細菌検出者数をメインテナンス群とSPT群間で比較したところ,唾液中のT. forsythiaの保菌者がメインテナンス群よりSPT群に有意に多かった.さらに,歯周病原細菌に対する血漿IgG抗体価と唾液中の歯周病原細菌検出者数をBRIS非保有群とBRIS保有群間で比較した.その結果,P. gingivalisに対する血漿IgG抗体価の陽性者数と唾液中のT. forsythiaの保菌者がBRIS非保有群よりBRIS保有群に有意に多かった. 結論:血液と唾液を用いた歯周病原細菌関連検査がインプラント周囲炎の予測因子として有用である可能性が示唆された.
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