歯周病は様々な全身疾患を増悪させる可能性が示唆されている慢性疾患で、歯周病の早期発見・早期治療は、国民に大きく寄与すると考えられる。現在、歯周病の診断は術者である歯科医師の熟練度によって左右され、また、歯周病の原因となる歯周病原細菌の検査もほとんど行われていない。FT-IR(フーリエ交換赤外分光光度計)は、フーリエ変換を利用して赤外光の各波長における強度分布を調べることのできる装置で、これにより物質の定性・定量分析ができる。FT-IRを用いた検査は、一般に唾液・歯周ポケット内の細菌検査として用いられているreal-time PCRと比較して、ランニングコストは安価で、その解析も短時間で行われる。そのため本装置を利用した検査は、歯周病置換度を測定できる簡便な検査方法として普及する可能性がある。しかし、FT-IRによる歯周病原細菌の同定はいまだ行われておらず、また口腔内細菌の存在する唾液がどのようなスペクトルを示すかは知られていない。本研究は、FT-IRを用いて、唾液並びに歯周病原細菌を解析することにより、歯周病罹患度を簡便に測定できる検査装置開発のための基礎データを得ることを目的とし、計画された。研究実績として、歯周病患者唾液と健常者唾液を採取し、歯周病患者と健常者のIRスペクトルをFT-IRを用いて比較したところ、RAW IRスペクトルでは吸光度の大きさが異なっていることが分かった。これらの違いは歯周病患者サンプルと健常者サンプルで、生体分子の量比の特徴が異なっていることが示唆され、これによりFR-IRは歯周病の判別が可能であることが示唆され、歯周病罹患度の検査の一つとなりうることが考えれれた。
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