近年報告された、ヒト間葉系組織中に存在するMuse(Multiliniage-differenciating stress enduring)細胞(多分化能を有するものの造腫瘍性を持たない特性を有する)について、便宜抜去された歯から歯髄組織を採取して、その歯髄からMuse細胞を効率良く分離・培養する方法を確立するために研究を行った。 本研究は鶴見大学歯学部倫理審査委員会の審査と承認「歯髄由来Muse細胞を用いた新規組織工学的歯周組織再生療法の開発(1113号)」のもとに遂行された。本研究に使用したヒト歯髄細胞は、本研究の趣旨を十分に説明した後に、書面にて同意の得られた矯正学的見地から抜歯が避けられない症例であった被験者より採取した。 Muse細胞に関する各種プロトコールに準じて染色を行った後、セルソーターにてソーティングを行い、シングル細胞となるよう播種した。その後、クラスタが形成された細胞のみをピックアップしてゼラチンコーティングされたプレートで付着培養し、その条件で増殖した細胞が自己複製能を有することを確認した。また、付着培養で増殖した細胞からRNAを抽出し、得られたRNAを元に三胚葉分化能についてRT-PCRで確認した。その結果、内胚葉のマーカーであるAFPおよびGATA6、中胚葉のマーカーであるBrachyury、外肺葉のマーカーであるMAP-2の遺伝子発現が確認された。 以上のことから、ヒト歯髄からMuse細胞を一定程度の比率で分離できることが明らかとなった。
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