従来より、ペリオドンタルメディスンの考えから、歯周病と動脈硬化症の関係が注目を浴びている。申請者らは、歯周病を惹起させたマウスの末梢血タンパクと肝臓mRNAにおいて急性炎症マーカーである血清アミロイドA(SAA)が上昇することを見出した。そしてin vitroの実験系でヒト血管内皮細胞に対するSAAの添加により、動脈硬化発症に関与するVCAM-1、ICAM-1、MCP-1などのマクロファージ接着因子・遊走因子の発現上昇を認めた。そこで本研究課題では、血管内皮細胞における、動脈硬化症発症に関わるSAA受容体を解析し、歯周病由来SAAシグナル抑制による歯周病誘導性動脈硬化症モデルに対する抑制効果を解析することにより、SAAを介した歯周病による動脈硬化症発症のメカニズムの詳細を明らかにすることを目的として実験を開始した。 昨年度はSAA添加により発現上昇をきたすTLR2に着目し、SAA-TLR2 signal pathwayの抑制のため、TLR2に対する中和抗体を用いて実験を施行した。その結果、ヒト血管内皮細胞にSAAを添加することによってみられるVCAM-1、ICAM-1、MCP-1などのマクロファージ接着因子・遊走因子の発現上昇が、TLR2に対する中和抗体を添加することにより、それらの発現が有意に減少した。当該年度は制効果が認められたTLR2に対する中和抗体を、動脈硬化易形成マウス(APOE遺伝子欠損マウス)の口腔内にIL-6を投与することによって動脈硬化を促進する実験系に対して投与を行い、その効果を心臓でのoil-red染色で比較・検討した。その結果、control群と比較し、TLR2中和抗体投与群の方がoil-red陽性部位の減少傾向を示した。
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