研究課題/領域番号 |
25862071
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
前澤 仁志 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (80567727)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 脳磁図 / 体性感覚誘発脳電位 / 三叉神経 / 下顎神経 / 感覚異常 / 体性感覚誘発脳電位 / 神経損傷 |
研究概要 |
口腔領域は、摂食・嚥下や発声・発語に重要な役割を果たす。口腔外科領域では、術中の神経損傷により舌や口唇に感覚異常を生じることがあり、QOL低下の要因となっている。臨床で用いられている2点識別検査法は、被験者の主観に頼るため、再現性が低いことがあり、感覚異常を客観的に評価する方法が求められている。 今年度は、術後に片側に口唇感覚異常を生じた患者を対象に、脳磁図計測装置を用いて口唇感覚異常の客観的評価に成功し、学術誌に公表した(Clin Neurophysiol. 2014;125(2):363-9)。健常者の片側刺激では、右側、左側刺激ともに刺激対側半球に誘発脳磁場反応(P25m)が認められた。患者では、健常側刺激においてはP25mの反応を認めたが、患側刺激ではこの成分の反応が消失していた。下唇の感覚異常の定量評価には誘発脳磁場反応の有無が指標になると考えられ、下唇の感覚異常の定量評価において脳磁図検査が有用であることが示された。本研究で用いた手法は末梢(口唇)の感覚異常を中枢(大脳皮質)の反応を指標に評価するため、"客観的"な診断方法である点に意義がある。 さらに、舌感覚異常を有する2名の患者を対象に、舌感覚異常の回復前後における感覚異常の客観的評価を脳磁図計測装置を用いて行った。患者の主観的な感覚の回復とともに、誘発脳磁場反応の回復が認められた。また、サンダーランド分類において神経損傷が重度の被験者において誘発脳磁場反応の低下が認められた。今後、神経損傷の重症度と体性感覚誘発脳磁反応との相関を検討することで、誘発脳磁反応の大きさから神経損傷の重症度を診断できる可能性がある。本研究内容は、国際学会(ISACM meeting)にて報告した。今後、学術誌を通じて公表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、脳磁図計測装置を用いて舌運動時の脳ー筋コヒーレンス反応の記録、解析を進めている。今後、被験者数を増やすことで、ヒトの舌運動時の中枢(大脳皮質)と末梢(筋)との機能連関に関する知見を学会や学術誌を通じて公表する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
現在行っている計測条件でサンプルサイズを増やす予定である。また、得られた知見を学会や学術誌を通して報告する予定である。並行して下記の項目を推進する。1.記録電極のさらなる改良を行い、2.最適な運動タスクを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
電極の開発が想定より順調に進んだため、開発に要する費用が想定より低くなったため、次年度への持越しが可能となった。 今後、様々な運動時の筋活動を記録するため、運動時にシグナル・雑音比の優れた電極の開発を継続して行う。
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