食事は高齢者の日常生活で大いなる楽しみの1つである。口唇と口腔は食物を認識する最初の器官である。従って口腔内認知機能の能力を検討することは摂食嚥下機能の評価にリンクしており、前頭前野活動の関連は認知症患者や高齢者の摂食嚥下機能を評価する基礎データとなり得る。本研究では、健常成人が口腔内認知能力(OSA)試験を行っている時の前頭前野活動をNIRS (Near Infra-Red Spectroscopy)を用いて測定し、認知脳活動と口腔内認知能力との関連性について検討した。 健常性成人12名にNIRS(32ch)測定下でOSAテストを行った。被験者には閉眼してもらい、口腔内にブロックを入れて、感知した物体と図形で示したものと一致するか点数化した。ブロック形状の違いによる誤答率、前頭前野の脳活動変化を検討した。得られたデータを基に各々のブロック形状の違いやブロック探索前・中、解答時、解答後の脳血流平均値を各々32chすべて検討した。 結果では、三角形状の誤答率が低く(11.4%)、楕円に近い形状では高かった(34.1%)。測定した32chでは6か所に探索前、解答時、解答後で有意な脳活動の変化を認めた。ブロックの探索中の脳血流量は三角形で2か所、楕円形で3か所で変化を認めた。誤答率が低い形状は前頭前野の活動に有意な変化は認められず、誤答率が高い形状は前頭前野の有意な活動変化を認められた。これは誤答率の低い形状は尖部な箇所があり、舌で認識し易く、あまり悩まずして判別できると考えられるので大きな活動変化なかったと考えられた。今後の研究としては高齢者に可搬型NIRSを用いて、さらに口腔機能の評価(舌圧、咀嚼能力等)との関連性を検討し、口腔機能と前頭前野を賦活させる運動との比較を検討していきたい。
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