研究課題
本研究では咀嚼運動と嚥下反射の関係を検索し,最終的には咀嚼嚥下過程における食塊の物性変化と嚥下反射惹起に至るトリガー要素の関係を明らかにすることを目的としていた.初年度は実験のセットアップと記録開始まで,次年度は解析と成果発表,最終年度はさらなる記録と解析,成果発表,論文執筆を行った.初年度,次年度は咀嚼と嚥下反射の関係を明らかにすることを目的とした.セットアップには生体記録として舌骨上筋群,咬筋の表面筋電図,嚥下内視鏡を用いた.液体0.5mlを中咽頭,下咽頭に直接滴下し,誘発される嚥下反射が咀嚼運動によってどのように変化するか検討した.初年度は咀嚼する食物をガムのみとしていたが,次年度は嚥下を要するグミ,米飯,餅を追加した.結果,滴下から嚥下反射惹起までの潜時は,安静時とガム咀嚼時で差はみられなかったが,咀嚼を要する食物では潜時が延長していた.前年度までの研究によって咀嚼運動が嚥下反射惹起のタイミングに影響を与えることが示唆された.物性間の比較では,グミ,米飯,餅の順に潜時が延長していた。つまり,より咀嚼が必要である食物摂取時に潜時は延長していた.さらに,咀嚼から嚥下反射までの食塊がどのような形態変化を示すのか検索するため,咀嚼回数の1/4期ごとに食塊を吐き出させて直ちにクリープメータにて計測した。各期,嚥下直前の物性は食品,個人で異なっており,一定の物性とはならなかった。一方で,個人内の再現性は高く,付着性,凝集性のみならず,水分値も食品毎にある一定の帯域に収束した。筋電図記録も同様に,個人内での再現性は高かった。本研究より,咀嚼運動と嚥下反射の関係,咀嚼嚥下時の食物物性が明らかとなった。今後は,本データを使用することにより,摂食嚥下障害を持つ患者さんの臨床データから問題点を抽出し,安全な食形態の提供や効果的な摂食嚥下リハビリテーションを提供することが期待できる.
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Dysphagia
巻: 31(1) ページ: 33-40
10.1007/s00455-015-9655-9.
巻: 30(6) ページ: 669-673
10.1007/s00455-015-9641-2.