研究課題/領域番号 |
25862079
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
上田 菜美 大阪大学, 歯学部附属病院, 医員 (90635377)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 運動速度 / 舌骨 / サルコペニア |
研究概要 |
超高齢社会を迎えた日本において、老年症候群であるサルコペニアは避けられない問題である。サルコペニアによって嚥下障害が惹起されると、低栄養・廃用によりさらにサルコペニアが進行する。この悪循環を断ち切るために、嚥下関連筋におけるサルコペニアの早期発見が望まれる。そこで申請者は、嚥下において重要な筋であり、サルコペニアの影響を受けやすい抗重力筋である舌骨上筋群に着目し、舌骨上筋群の収縮速度を反映する舌骨の速度を測定し、サルコペニアによる影響があるかどうかを検討した。 平成24年度には、健常高齢者20名を対象に、嚥下造影検査を行った。被験食はバリウムの液体とし、一定量を口腔内に含み、一度に嚥下させた。サルコペニアに影響すると考えられる、加齢・栄養状態との関連を調べることを目的に、年齢、既往歴、身長・体重(BMI)、握力を記録した。舌骨運動は性別によって差があることが報告されているため、まず撮影した20名のうち、高齢女性10名の舌骨の移動距離と速度を解析した。解析に使用した画像は、過去に申請者が健常成人にて同様の研究を行った際に、最も大きな速度を必要とした20ml嚥下時のものとした。 健常成人女性と健常高齢者の2群で、舌骨の移動距離・最大速度で比較した。舌骨の移動距離においては健常高齢者群で大きな値を示した。これは、加齢による安静時の舌骨位置の下降による影響と思われた。舌骨の最大速度では、健常成人群で、大きな値を示す傾向にあった。これは、最大速度を発揮するための筋力が高齢者において低下していることを示唆している可能性があると考えられた。上記の結果は国際嚥下学会であるdysphagia research society にて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常高齢者群としては、男女共に10名程度の協力を得ることが出来た。そこから、女性における加齢変化によるサルコペニアの影響と思われる舌骨の運動速度の低下を明らかにすることが出来た。 しかしながら、健常高齢者の嚥下造影検査の撮影は、放射線被爆という問題から、研究の協力になかなか同意が得られないことがあった。加齢の影響を見るためには、被験者数をより多く確保することが重要と考えられるため、当初は、対象群を年齢別に細かく、50歳代、70歳代、90歳代に分類し、解析を行う予定にしていたが、そこは方針を変更しなければならないと思われた。
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今後の研究の推進方策 |
健常高齢者と健常成人におけるデータの比較を継続して行うこととする。加齢との関連を見る上でも、被験者数はより多いことが望まれるため、撮影協力のお願いは継続して行う。 また、サルコペニアについて言及するためには、加齢のみならず、廃用の程度や低栄養の有無についても解析することが必要である。介入として嚥下関連筋の訓練が行えないか、その点に関しても協力のお願いをする予定である。 また、現在撮影を終了している画像についても、順次解析を進めていく必要があるため、その作業が円滑に行えるように研究補助なども利用したいと考えている。可及的に早く解析を進めて、BMIや握力などの情報との関連の有無について、検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
概ね予定通りに使用したが、誤差で10,171円のみ残った。 被験者数を増やすために、実験時の撮影や解析のために人件費に使用する予定である。
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