当院で行った心臓手術のうち弁膜症と虚血性心疾患関連手術を受けた患者ならびに呼吸器・消化器悪性腫瘍手術患者に対し、術前から術後にわたる口腔管理を行いその効果・意義を検討した。 評価項目として、口腔内因子を6カ月以内の歯科受診歴の有無、介入前数年間における歯科受診頻度、口腔内に関する自覚症状の有無、術前の歯周炎の程度や残存歯数、齲蝕罹患歯数、歯冠補綴部の適合度、義歯の使用の有無、顎骨内病変の有無(感染の有無は問わない)、抜歯適応歯数および実際に抜歯した歯数、口腔乾燥度、歯ブラシや歯間ブラシなどの補助器具を用いた口腔セルフケアの習慣・頻度などとした。加えて、術後気管内挿管中における口腔内細菌数の推移や口腔乾燥評価を行った。一方、全身的因子として心疾患以外の基礎疾患の有無(特に代謝疾患)、口腔管理開始から手術までの日数、手術時間、術中出血量、気管内挿管の日数、発熱の有無、血液データ(特に炎症反応)の推移、人工呼吸器関連肺炎や感染性心内膜炎の発症の有無やその他の感染症発症の有無について検証を行った。 登録した介入症例数は増加したものの、前年までと同様、一人の患者に対し複数の評価者(研究協力者)が関わることもあり、特に口腔内因子の術前評価や管理方法において、差異がみられた。また、患者主導となるセルフケアに関しては、評価者によって評価法が統一されなかった。一方、全身的因子についてはカルテから十分な情報収集ができるものでありデータベース化を進めることができた。
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