唾液はさまざまな生体情報を含んでいるため、口腔領域に留まらず、ストレスを測定する因子としても注目されている。しかし、口腔内状態および口腔内自覚症状と唾液ストレスマーカーとの関連についての報告は少ない。そこで、唾液ストレスマーカーと口腔内状態および口腔内自覚症状との関連についての検討を行った。 日本多施設共同コホート研究(J-MICC Study)および脳ドック検診の参加者199名を対象とした。唾液は安静時唾液を採取し、αアミラーゼ、インターロイキン-6(IL-6)等を測定した。歯科医が対象者と対面にて口腔内視診を行い、口腔内状態を確認した。また自記式アンケートにて口腔内自覚症状等を調査した。男性と女性について口腔内状態および口腔内自覚症状と唾液ストレスマーカーの差異についてMann-WhitneyのU検定を用いて検討した。 解析対象者は男性124名(平均年齢:65.3±9.0歳)、女性62名(平均年齢:57.4±9.7歳)であった。男性ではアミラーゼにおいて残存歯数が19本以下(113.2±53.1kU/L)と20本以上の者(92.4±61.9kU/L)およびIL-6において19本以下(12.5±25.1pg/ml)と20本以上の者(4.6±7.5pg/ml)で有意差を認めた。女性ではコルチゾールにおいて義歯使用者(0.21±0.11µg/dl)と未使用者(0.15±0.06µg/dl)で有意差を認めた。 臼歯部の早期接触によりαアミラーゼが有意に上昇するとの報告があり、男性において咬合不全とαアミラーゼの上昇の関連が示唆された。また女性においては、義歯使用が咬合のストレスとなる可能性性が示唆された。
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