研究実績の概要 |
昨年の研究から口腔内違和感には,多要因が複雑に絡み合っていることが示唆され,その中でも口腔環境のひとつである口腔乾燥に関連があることがわかった。そこで、本年は口腔粘膜違和感に対する細胞学的評価法を確立するために,口腔乾燥に焦点をあて,一般に口腔乾燥の原因として指摘されている服用薬剤の種類や服用期間に関するリスクを検討した。 対象は,本研究に本人または代諾人が同意をした104人の要介護高齢者とした。方法は,対象者の属性,全身疾患,服用薬剤名およびその服用期間を施設保管の個人記録から抽出と口腔内診査をした。口腔乾燥のアウトカムを舌背粘膜上の唾液湿潤度10秒値(3㎜未満を口腔乾燥群)とし,多重ロジスティック回帰分析を行った。 口腔乾燥が54%に認められた。抗血小板薬([OR]=10.018, [CI]=1.103-71.518), 利尿剤 (OR=5.436, CI=1.082-27.309) ,降圧剤 (OR=0.121, CI=0.220-0.672)が有意に口腔乾燥に影響をしていた。一般に降圧剤は唾液の分泌を減少させて口腔乾燥の原因といわれるが,本結果は異なっていた。本研究は,唾液分泌量を検討したのではなく,口腔乾燥のアウトカムを粘膜上の湿潤度としたために異なる結果となったのではないかと考えた。口腔内違和感は,唾液の分泌異常よりも粘膜上の保湿状況が影響すると思われ,今後は詳細な検討が必要といるが細胞学的に検討時には,服用薬も含めて評価をする必要性を知れた。
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