研究課題/領域番号 |
25862086
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
遠藤 眞美 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (70419761)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 口腔内違和感 / 口腔乾燥 / 高齢者 / 口腔粘膜 / 歯学 / 口腔心身症 |
研究実績の概要 |
本年度までの本研究において,口腔内違和感を訴えた高齢者968人における舌痛や味の変化などの口腔粘膜違和感のリスク因子について口の中が乾く,口の中がネバネバするといった口腔乾燥の自覚症状がその一つであると理解できた。そこで,本年は某市イベントに参加していた健康高齢者のボランティアを対象に口の乾きの自覚を調査したところ,有効回答数が138人で,そのうち口の乾きについて“いつも”が15人(10.9%),“ときどき・少し”が47人(34.0%)と約45%が口の乾きを自覚していた。口腔乾燥は器質的,機能的な原因が複雑に作用して引き起こされる。一般に口腔心身症ととらえられてしまう口腔内違和感のリスクとなる口腔乾燥症が約半数に認められたことは,本来,口腔内違和感は心身症ではなく,口腔内状態などの影響が否定できない可能性が示唆された。 そこで,歯科治療を目的に歯科診療所を受診した高齢者100人を対象に,口の乾きの自覚と口腔内状態や全身状態について検討した。“口の乾きあり”と“口の乾きなし”と回答した者が各50人であった。主な訴えは,“口の乾きあり”と“口の乾きなし”における主な受診に至った訴えは,歯肉出血が各24人,義歯不適合が14人,13人と同様な傾向であった。一方で,“口の乾きあり”は“口の乾きなし”に比較し,疲れやすさ,ほてり感,かみにくさ,つばがたまる,食事が上あごに残る,食事が頬に残る,滑舌の悪さについて困っていると回答した(p<0.05)。口の乾きの自覚者は,医療者に直接の訴えがなくても全身状態や口腔機能の減退を自覚していることから,口の乾きの自覚は口腔機能低下を反映しており,これらが口腔内違和感を訴える要因の一つになっている可能性があることが示唆された。つまり,高齢者の口腔内違和感を口腔心身症と画一的に捉えるのではなく,口腔機能減退など多要因での解釈が必要と推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
平成25,26年において約1000人に対し,質問票調査および口腔内診査を実施し,その中で口腔乾燥感,味覚異常,舌痛など口腔粘膜違和感のリスク因子について詳細な検討を行い,睡眠剤服用,飲水を心がける,睡眠導入剤の服用,貧血の既往,浮腫みやすさなど様々な全身状態との関連があることが明らかにした。平成27年度からは各要因と口腔粘膜の擦過細胞診結果との関連を検討する予定であったが同年に大学を移籍し,それまでに研究を遂行していた研究対象であった福岡県の施設が遠方となったため新たな対象施設を探す必要が生じた。その後,対象施設を検討している間に本研究を実施するうえで必要な口腔擦過細胞診用サイトブラシの販売が中止となり,他に代用できるブラシの選定などを行ったものの適切といえるものはなく,自ら開発を実施し,そのブラシの開発に時間を要してしまったため本課題は遅延している。
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今後の研究の推進方策 |
本課題は本来,4年目の本年度で終了となる予定であったが,リスク因子の解明に時間がかかったことに加え,平成27年度に大学を移籍したことによって研究対象施設が遠方となり,施設の選定,サイトブラシの開発などに時間を要し,遅延してしまった。そこで,平成29年度への課題の延長申請を行い,継続させていただけることとなった。そこで,新たに協力を頂ける施設および現在,勤務する大学病院の受診外来患者において開発したサイトブラシを使用した研究を実施し,本研究を完了する。その際,開発したサイトブラシについても,臨床現場での妥当性,安全性,使用感などを検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度に大学を移籍し研究対象であった福岡県の施設が遠方となり,新たな対象施設を探す必要が生じたことに加え,本研究を実施するうえで必要な口腔擦過細胞診用サイトブラシが販売中止となったために研究が本来の予定で遂行できなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
新たに開発したサイトブラシの量産と細胞学的検索を行うために,サイトブラシ,スライドガラス,カバーガラス,写真現像代などとして使用する。
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