研究課題/領域番号 |
25862088
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
神尾 宜昌 日本大学, 歯学部, 助教 (60546472)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | インフルエンザウイルス / 口腔細菌 / ノイラミニダーゼ |
研究概要 |
毎年流行するインフルエンザにより小児や高齢者を中心に多くの命が失われている。また、新型インフルエンザの流行も危惧されており、インフルエンザの予防対策は喫緊の課題である。インフルエンザは口腔と密接に関連しており、口腔ケアがインフルエンザの予防に有効とされているが、その分子メカニズムは不明である。そこで本研究では、ウイルスの宿主細胞感染機構に注目し、口腔細菌がウイルスの感染性に及ぼす影響を検討した。 本年度は口腔細菌由来のノイラミニダーゼがウイルスの放出に及ぼす影響について検討した。口腔細菌培養上清のノイラミニダーゼ活性をスクリーニングした結果、Streptococcus mitisとStreptococcus oralisの活性が高かった。そこで、S. mitisおよびS. oralisの培養上清存在下でウイルス感染実験を行った所、ウイルスの放出が促進された。 さらにノイラミニダーゼ阻害薬のひとつであるザナミビル処理時に細菌由来のノイラミニダーゼがウイルス感染に及ぼす影響について検討を行った。ザナミビルがウイルスおよび細菌のノイラミニダーゼ活性に及ぼす影響を検討したところ、ウイルスの活性を阻害するものの、S. mitisおよびS. oralisの活性に影響を及ぼさなかった。ザナミビル処理時にS. mitisおよびS. oralisがウイルス感染に及ぼす影響を検討した結果、S. mitisおよびS. oralisの上清存在下において、ザナミビルによるウイルス放出量の抑制効果が減弱した。以上の結果から、口腔内からノイラミニダーゼ産生細菌を減らすことができる口腔ケアはインフルエンザウイルス感染予防に著しい効果があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ノイラミニダーゼ産生口腔細菌がインフルエンザウイルスの放出促進に働くことを明らかにし、学術論文として国際誌に投稿中である。さらに、今年度行った予備実験により、口腔細菌由来のプロテアーゼがインフルエンザウイルスの宿主細胞侵入にも関わっている可能性が示唆された。したがって、口腔細菌がウイルスの細胞侵入機構に及ぼす影響を、今後、詳細に検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
今年度行った予備実験により、口腔細菌由来プロテアーゼがウイルスの宿主細胞侵入機構に影響を及ぼしている可能性が示唆された。そこで今後は、口腔細菌プロテアーゼ特異的阻害薬および当該プロテアーゼ欠損細菌株を用いて、口腔細菌がウイルスの細胞侵入機構に及ぼす影響について詳細に検討する。さらに、口腔細菌がインフルエンザウイルス感染症の重症化に及ぼす影響について検討を加える。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を遂行して行く上で、必要に応じて研究費を執行した。本年度は、口腔細菌がウイルスの宿主細胞侵入機構に及ぼす影響についての解析が遅れたため、抗体等試薬使用量が見込みより少量で済み、当初の見込額と執行額は異なった。 研究計画に変更はなく、口腔細菌がインフルエンザウイルス感染へ及ぼす影響を検討するため、研究試薬等に繰越した研究費も含めて使用する。
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