研究課題/領域番号 |
25862089
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
小野 幸絵 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 助教 (60409240)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 近赤外分光法 / 顎口腔サルコペニア / サーモグラフィー / 口腔機能向上 |
研究概要 |
本研究の目的は,摂食・嚥下機能を支持する動的周囲環境をサーモグラフィー(以下TGとする)および近外赤外分光分析法(以下NIRSとする)を用い詳細にモニターし,顎口腔サルコぺ二アの前兆的変化を把握するための新指標を開発することである。この初年度の課題として,下記(1)~(3)を遂行した。(1)予測モデルのプロダクト 咀嚼機能を主機能とした場合の咀嚼筋,頬部血流の動態の関係性を評価し予測モデル化(2)試作評価システムの構築 先行研究での測定システムにTG1台を追加し,対照側の同時測定を可能とし(3)高齢者に対する試験的応用,データの収集および再現性の確認 高齢者3名と対照者2名に対して試験測定システムで測定を実施し,TG,NIRSのデータを収集(TG画像でターゲティング後にNIRSで唾液腺マッサージ効果を評価)(4)試験評価システムでの測定点の検討、解析用アルゴリズムの試作 得られたデータから重回帰分析を試み、予測モデルの再評価を実施した。 これまで歯科領域でNIRSが活用された事例は皆無に等しいことから、基礎データ蓄積は研究初年度の大きな課題であった。携帯型NIRSを活用した顎口腔機能評価システム構築の第一段階としては、測定端子の選定と測定部位の選定を行う必要があり、これら過程から必要に応じて端子の保持具や個人用テンプレートをベースレジン等で制作した。また評価およびドライバ用ソフトウェアの面からもカスタマイズして検証を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は従来の研究とは異なり,多要因性と考えられているサルコぺニアが、歯の喪失などの口腔内形態変化の影響を受け主機能の低下が生じ,支持機能の意義が相対的に低下したことが原因で廃用的変化が短期間に生じるとの仮説に立っている。この仮説を障害型予測モデルと介入型予測モデルを作成し両者で検討した。 サーモグラフィー測定、近赤外分光法により、咀嚼、嚥下時の支持機能の変化などのメカニズムを解明することに近づき、摂食、嚥下以外の表情形成との関連性など、動的周囲環境評価等への応用性、発展性も予測できた。 また基本構成システムで測定レンジ等のターゲティング用の基礎データを収集し、評価およびドライバ用ソフトウェアの面からもカスタマイズして検証を行うことができたため、おおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
25年度の評価システム構築、予備調査の結果をふまえ、定量化・指標化の段階として群間比較による差異の検出を試みる。各測定群の設定をし、前期・後期の2回の調査を予定、次年度前期まで継続3回実施する。 症例間比較では軟食摂取群、義歯使用群、健常歯群の3つの群にわけ6か月後測定を行う。個人内変化の追跡では高齢者群と対照群(健常成人)の2つの群にわけ6か月後測定し、時系列測定を行い咀嚼同期性、咀嚼緻密性、表情筋活動、時系列差異を検討する。特に26年度中に唾液腺マッサージ、義歯の使用による効果を検証する。 最終年度は口腔状況の異なる各対象からのデータ収集を試み、、結果データの解析方法、特に最終的な運用形態に向けた評価システムの見直しと、解析用アルゴリズムの決定を行う。咀嚼および摂食、嚥下の過程をモニターし、サーモグラフィー熱画像、VTR画像、近赤外分光法から数量化するための評価用クライテリアを確定する。これら結果レポートの意義を検証し、最終的な測定条件を決定する。完了までに100名以上の成人・高齢者集団に応用し個人内比較・集団応用の可能性について検証し、成果を関連学会に報告する。 得られた研究成果については、歯科医学会の関連各学会への発表・投稿を予定している。また新潟市などの健康福祉祭りなどを通じて地域への情報発信の機会を利用し一般市民向けにも健康教育の機会に利用する。この他、社会福祉協議会と連携し、体験型の成果報告会などの実施も検討する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定では成人50人以上のデータを収集し、深部血流動態の評価がどの程度客観的に可能か検証し、サーモグラフィーでの2次元的評価、口腔状況との関連性を検討する予定だったが、測定者数が予定より少なかったので、経費の使用を抑えることができた。 また調達方法の工夫などにより経費の使用が節約でき、当初の計画よりの評価が研究費を効率的に利用できた。 また研究成果の発表を次年度にまとめて行うこととしたため生じた未使用額である。 新たに咬合接触面積の評価を加えて予測モデル構築を行うためのレーザーソフトの更新、ワックスバイト・テンプレートの購入など必要となったため研究費を使用する予定である。 またパソコンOSの変更に伴い、25年度中に着手できない項目があったため26年度に行うこととなり研究費を使用する予定である。
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