介護予防対策が各地で実施されるなか、顎口腔サルコぺニアが注目を集めるようになってきた。摂食・嚥下機能障害の発現は、顎口腔周囲の筋肉量の減少に依存しており、口腔主機能を支える支持筋機能の低下をスクリーニングし、予兆的変化が把握できれば、新たな指標として活用できる可能性もある。申請者は、摂食・嚥下機能を支持する動的周囲環境を非侵襲的手法である赤外線サーモグラフィー熱画像とNIRS(近赤外線分光法)を活用し、これら課題を段階的に遂行してきた。 研究最終年度の課題としては、最終的な4チャンネルでのNIRS測定系の確立を目指し、アルゴリズムを含めた検証を実施した。NIRSからは頬部のOxy-Hb、Deoxy-Hbの経時的変化量の測定結果を得て、冷却負荷およびマッサージによる深部血流変化を観察した。測定は成人男性5名と70歳代の女性3名に対し実施し、赤外線サーモグラフィーで皮膚温変化中心をターゲティングし、同部にNIRSを装着後、Oxy-Hb、Deoxy-Hb、Total-Hbの経時的変化量を観察した。 冷却負荷後にOxy-Hb、Total-Hbは-0.15a.u.以下に低下したが、開放後に上昇に転じてマッサージ側では継続してOxy-Hb、Total-Hbの変化が大きくなり、終了時の変化量はTotal-Hbで0.1a.uを超えている者が多かった。 これら血流動態の変化が把握できたことから、今後の機能訓練等の評価に活用できる可能性が示され、今後も最終的な指標化を目指し継続して研究を進めたい。
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