本研究の目的は、東日本大震災において被災した看護師を対象としたメンタルヘルスの縦断的調査である。東日本大震災から約1年後の横断調査(高橋葉子:平成24年度科学研究費補助金、挑戦的萌芽)を縦断調査に発展させ、震災から2年後と3年後の時点で、震災当時宮城県沿岸部の病院に勤務していた看護師のメンタルヘルスの実態を明らかにすることを目的としている。 平成26年度は、震災から約3年半の時点で、平成24年度に調査を行った沿岸部の病院看護師約500名に対して質問紙調査を行った。そのうち、平成24年度調査参加者からの回答で連結可能なものは約300であった。主な質問項目としては、基本属性、個人的被災の程度、ソーシャルサポート、PTSD症状を測定するPCL日本語版、うつ病症状を測定するPHQ-9日本語版とした。 その結果、平成24年度から比較すると、PTSDおよびうつ病症状の各平均値およびハイリスク者の割合は減少傾向であることが明らかになった。一般化推定方程式(GEE)を使用して解釈した結果、PTSDの合計点の2地点の変化に関しては、平成26年度においてもなお震災時の自責感を感じている者、住民から非難を浴びて精神的につらい思いをしている者の方が、そうでない者と比較して合計点が増加する傾向が見られた。PTSDのリスクに関しても同様の結果が得られた。うつ病症状の合計点の2地点の変化に関しては、平成26年度においてもなお震災時の自責感を感じている者、平成24年度と比較し平成26年度の家族のサポート得点が下がった者の方が、そうでない者と比較して合計点が増加する傾向が見られた。うつ病リスクに関しては、平成26年度においてもなお震災時の自責感を感じている者、平成24年度と比較し平成26年度の上司のサポート得点が下がった者、被災の影響で仮の場所で臨床業務にあたっている者の方がリスクが上がる傾向が見られた。
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