本研究は、看護学生の看護実践現場への参加という視点から学生の臨地実習での学習過程を捉え、看護実践現場の一員として成長するための看護学臨地実習教育の提案を目指すことである。本年度は、2015年度に実施した卒業前段階で履修する統合看護実習の中で、複数患者受け持ち実習の指導を行った臨床現場の看護師(以下、指導者)の面接調査を中心に分析を実施した。指導者は、複数患者を受け持つ実習を通した看護学生の学習効果として[スタッフと一緒にケアをする姿勢][タイムスケジュールの視点の形成][優先順位の視点の形成][2名の患者に必要なケアの実践の展開][チームで関わる視点の理解]を挙げ、現実の看護チームの中での臨床の時間軸や現実の状況から学びを得ていると捉えていた。一方、学生の課題には、[一方の患者のケアへのとらわれ][時間管理やタスク管理の視点ばかりに傾く][追いつかない患者理解][患者理解が不十分なままの実践]等が指摘され、学生の思考が、患者ではなく業務思考に陥りやすい傾向や、不十分な患者理解のままにケア介入をする学生の姿勢への危惧が指摘された。さらに、複数患者を受け持つ学生に対する指導のイメージの不足等、[指導・介入の程度に対する判断の難しさ]、学生がチームに入るという目標の到達点が見出せない等[実習目標に対する疑問]も挙げられた。「複数患者受け持つ」というより現実状況に近づく実習では、指導者側も学生の看護実践に参加する姿勢の変化や、学びの変化を認めるなど、リアルな状況から学ぶことへの一定の効果を認める一方で、その課題点も明らかにすることができた。研究成果から、看護実践現場の一員として学生が学ぶ体制の構築に向けて、学生自身も看護実践現場に入り実践している意義を見出せる支援の必要性、看護実践現場と教育機関の間で実習教育の目的や実践現場での学ぶ意義を共有し指導体制を構築する必要性が示唆された。
|