看護技術をより正確に、かつ効率良く習得するための教育方法として、小型モーションセンサの活用を検討した。小型センサは身体の位置座標の時間的変化を測定できることから、ビデオ撮影と併用することによって、ある時点における三次元的な動きを捉えることが可能である。さらに、小型センサで計測されたデータを角度に置換し、実施後すぐに確認できる装置を教育的介入に活用することで、自己の動作の特徴を客観的に捉えることができ、姿勢の改善につながるのではないかと考えた。先行研究では、小型センサにより識別可能な動作は身体全体を使用して行う動きであり、体位変換や立ち上がりの援助、車椅子移乗など移動に関わる介助動作が挙げられていた。 そこで、体位変換と移乗介助の動作について小型モーションセンサを用いる客観的評価を取り入れた教育的介入の効果を明らかにすることを目的に、以下の研究を実施した。対象はA大学看護学生7名であった。対象者は仰臥位で臥床している患者役の体位変換と車椅子移乗介助を実施した。実施時に小型センサを用いて腰部の前傾角度を計測し、実施状況を動画撮影した。教育的介入として、研究者は計測した前傾角度をグラフで示し、実施時の動画とともに対象者と確認して腰部負担の少ない動作姿勢の指導を行った。研究デザインはシングルケースデザインを採用し、4つのセッション(介入直前、介入期、介入翌日、介入1ヶ月後)に分けて実施した。前傾角度の変化は対象によって増減は見られたものの、全学生が介入翌日・1ヶ月後で危険角度40°より低値であった。教育的介入への感想では「自己の動作に関する具体的・客観的な理解」「既習内容の振り返りの機会」「姿勢改善への意識化」「より良い援助への意欲」にかかわる内容が記述されていた。小型センサを取り入れた教育的介入は一定の効果が得られると考えられた。
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