日本の看護師に対する現行のワーク・ライフ・バランス施策は、家族役割のある者の福利が最優先されており、出産・育児期以外にある看護師のためのワーク・ライフ・バランスは充分に考慮されていない現状がある。しかし、出産・育児期以外の看護師のワーク・ライフ・バランスに関する研究知見はほとんど蓄積されておらず、どのような課題があるのか具体的に明らかになっていない。 したがって、出産・育児期以外の看護師のワーク・ライフ・バランスの現状と、ワーク・ワイフ・バランスの実現に望ましい支援施策の方向性を明らかにするために、まずは国内外の看護職以外の組織における先行研究をレビューした。一般企業では、出産・育児支援に偏重した制度の導入によって、制度対象外の従業員の仕事量が増し、結果的に業務全体に悪影響が生じたケースが複数報告されていた。また、海外の一般労働者を対象とした先行研究では、WLB支援制度の適用に公平性が欠けると、従業員の不平等感が高まり、自発的な離職率が高まる危険性があることも明らかになっていた。これらの結果をふまえ、看護組織における幅広い対象へのワーク・ライフ・バランス支援を導入するために必要な取り組みとして、出産・育児支援以外のワーク・ライフ・バランス施策や、出産・育児支援と並行した代替要員配置のシステム等が求められていることが推察された。今後はこれらの結果をふまえて、出産・育児期以外の看護師や組織の管理職を含めて、具体的な取り組みに関する調査を行っていきたい。
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