看護学基礎教育において看護学生のコミュニケーション能力の向上に向けた教育が求められているが、未だ効果的な教育内容・方法・評価の確立には至ってない。よって、本研究は、臨地実習中の看護学生に対して、ソーシャルスキルストレーニング(Social Skills Training:以下SST)を実施し、SSTが看護学生のコミュニケーションスキルにもたらす効果を明らかにすることを目的とした。 最終年度は前年度に引き続き、3週間の臨地実習中に「患者とのコミュニケーションで感じた困難」をテーマに3回を1クールのSSTとし実施した。2年間実施したSSTには18名の学生がSSTに参加し、4クール実施した。そのうち、分析可能な13名の学生の質問紙の結果を分析した。その結果、学生がSSTにおいてロールプレイを実施し、コミュニケーションで困難に感じていたことについて解決策を見出すことは、学生の自己効力感の向上に繋がることが示唆された。しかしながら、学生の自己効力感は、患者との困難をSSTで解決したことだけでなく、実習の到達度や充実感なども影響していると考えられる。また、SSTを通して学生が、臨地実習中に困難を感じている内容は、患者のボディイメージや身体感覚等の自己概念についての内容や学生自身が羞恥心を伴う排泄について尋ねるコミュニケーションが多いことが明らかとなった。しかし、3回のSSTでは、実施可能なテーマも限られていることから、SSTによりコミュニケーションスキルの一時的な向上は認められても、獲得したスキルを維持するためには継続した支援が必要であると考える。
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