看護師の手指衛生は感染防止のために重要であるが、その実施率は低く、手指衛生が必要なタイミングで実施されていない現状が指摘されてきた。本研究では、体液に暴露するリスクのある看護ケアの一つである陰部洗浄について、一連の看護の中で効果的でかつ実践可能な手指衛生のタイミングを含むケアのあり方について検討することを目的とした。平成28年度は、文献検討に基づき、陰部洗浄の方法や手指衛生のタイミング・方法、手袋着脱、病院・病棟の感染対策等に関する調査票を作成し、自記式質問紙調査を実施した。対象は一地方の一般病院353施設の病棟看護師とし、各施設2部ずつ送付し、回収は212部であった(回収率30.0%)。陰部洗浄は、患者1名に対しスタッフ2人で、1日1回および排便時に、清拭と連続して行う場合が多く、便器は使用せず、手袋2双を用いて、不織布やガーゼ等の布で石鹸洗浄が実施されることが多かった。対象者の所属病棟の4割以上で擦式消毒用アルコール製剤を全員が携帯していたが、石鹸やペーパータオル、あるいは手洗いシンク自体の不備により、手洗い設備環境が整っていない病棟もあった。陰部洗浄時の手指衛生の方法としては、物品片付け後は手洗い、その他のタイミングでは擦式手指消毒が行われていた。陰部洗浄時の手指衛生のタイミングとして、病室入室前および病室退室後に可能な手指衛生は9割以上の看護師が実践しており、さらにベッド周囲においてもさまざまなタイミングで手指衛生や手袋着脱が行われていた。自由記述内容から、看護師は患者のプライバシーに配慮し短時間で陰部洗浄を行いつつ効果的なタイミングや方法で手指衛生を行うことに困難を感じていることが示唆された。
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