これまでの調査で生体肝移植ドナーの多くが術後1年以上経過後も創部や消化器系などの不快感やダメージを受けていることが明らかになっている。さらにドナーは術後に身体症状を訴えても不定愁訴のようにあつかわれたりした経験の報告もある。生体肝移植ドナーは元々健康な人ではあるが、自ら肝臓の一部を身内であるレシピエントに提供するために肝葉切除という侵襲を受けており、術後のフォローアップは不可欠である。しかし生体肝移植ドナーの術後のフォローアップは施設によりまちまちである。そこで本研究は、生体肝移植ドナーが術後も長期に渡って安心して生活できるためのよりよいフォローアップシステムの構築を目的に多施設のフォローアップシステムの調査を行った。 現在全国で生体肝移植を行っている施設は、60以上あると予測されるが、通算50例以上の手術経験のある施設を対象とした調査の結果、通常退院1ヶ月後、その後術後3ヶ月、6ヶ月、1年を目途とした受診を勧めていた。そして1年以降は年に1度の受診を勧めるが、多くのドナーは、社会復帰後は職場等の定期健診を受ける為、術後1年以降の定期受診率は下がっていった。術後数年が経過しても定期的に受診をするドナーは、無職の場合が多く、レシピエントの受診に同行し、ドナー自身も受診するという形態をとっていた。また、肝移植ドナー外来を設置している病院も複数見られたが、患者絶対数も限られており、一般外来と併用されている場合が大多数であった。ドナー外来への受診アクセスのしやすさには地域格差もあることが示唆された。
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