遺伝性腫瘍(特に遺伝性乳がん・卵巣がん症候群;HBOC)の医療側の受け入れ体制を整備するための基礎資料とするために、九州圏内のがん患者に関わる臨床看護職(以下、がん臨床看護職)の遺伝性腫瘍の認識と実践力および教育ニーズを明らかにすることを目的とした調査を実施した。 九州圏内でがん診療を行う総合病院15施設のがん臨床看護職359名を対象に郵送質問紙調査を実施した。調査票では遺伝性腫瘍の知識と経験、遺伝看護実践能力の自己評価、遺伝性腫瘍医療に関する教育ニーズを問うた。データは統計的手法を用いて分析した。データ収集期間は2016年2月から3月で、A大学医学部医の倫理委員会の承認を得て実施した。 調査票は306部回収した(回収率85%)。対象の年齢の中央値は36[28~45]歳、臨床経験年数の中央値は13[6~22]年だった。105名(36%)ががんと遺伝に関わる相談を受け、うち73%が対応に困っていた。64名(22%)が遺伝性腫瘍のケースと関わった経験があった。258名(85%)が遺伝性腫瘍に関心を持っていたが、HBOCを知っている者は38名(13%)で、うち遺伝形式を理解していたのは15%だった。がん遺伝看護実践力の自己評価において、生活支援、相談者の理解支援が最も高く(5点中3.1±0.6)、他機関への照会と連携(2.8±0.7)が最も低かった。教育ニーズについて、家族性腫瘍医療の基礎から実践に関する事項のニードが高かった。 今後がん臨床看護師が遺伝性腫瘍に関する対応を求められる可能性が高くなることが推察され、遺伝カウンセリングの周知や専門/認定看護師の遺伝性腫瘍に対する認識の向上を図り、臨床看護師がこれらをリソースとして活用していけるよう整えていくことが求められる。 本研究結果の一部を、第22回日本家族性腫瘍学会学術集会で発表する。
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