糖尿病の進行から糖尿病腎症を生じ、それによって透析導入した患者が増えている現状がある。本研究では、糖尿病の進行度による足病変リスクについて検討した。 結果の一部を示す。透析患者の皮膚は非常に乾燥しており、踵部の角質水分量は糖尿病の有無にかかわらず、低かった。乾燥している人の割合は、非透析糖尿病者の乾燥者の割合より高かった。足底の皮膚の乾燥の理由は、角質の水分保持能力の低下、汗腺の働きの低下、発汗の減少といった透析患者の特徴が考えられるが、これまでの皮膚の状態のアセスメントから、これらに加えて白癬が影響しているのではないかと考えた。そこで、皮膚科医に全例の足底の写真判定を依頼したところ、白癬同定の検査をしていないものの、肉眼的に半数弱の患者の足底に白癬がある可能性が示唆された。白癬の罹患者は健常者の2倍以上で、高率であった。白癬疑いの患者の踵部の角質水分量は白癬がない患者より有意に低かった。しかし、予測に反し血流の指標であるABI/TBIと角質水分量の関連は見られなかった。白癬による乾燥により亀裂を生じることがあるが、傷があることは感染症の侵入門戸となり、蜂窩織炎や膿瘍を形成しやすいことが知られている。皮膚が乾燥し、亀裂部に温度上昇の見られた白癬疑いの患者に保湿ケアと白癬の治療を促したところ、角質水分量の上昇、炎症所見がなくなるといった教育効果がみられた。 今回は写真判定であったため、今後白癬同定検査は必要であるが、保湿ケアに加えて白癬に対する治療を促していくことが重要であることが示唆された。 また、患者の中には疼痛やしびれ等があったり、測定中、同一の姿勢を維持するのが難しい者もおり、血流評価方法については再度検討する必要がある。今後の課題とする。
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