研究実績の概要 |
昨年度に引き続き,慢性呼吸不全患者の生活機能と生活の実態に着目し,より実践に即した評価のための尺度の洗練を行い,質問紙の作成を行った.具体的には,1)生活機能尺度の構造化,2)データ収集と分析,3)生活機能尺度に対する生活体験の反映を確認することとした. 生活機能尺度の構造化にあたり,WHO(2002)の国際機能評価分類:国際障害分類改訂版(Internationa Classification of Functioning, Disability and Health,以下ICF)を概念枠組みとし,質問肢の構成のため,生活機能に影響する現象について,患者の体験と合わせて生活実態を説明した.前段階の研究に加え,計10名分のデータの分析を行った.患者は身体の機能について〈息が苦しいから,気を散らすことばかりを考える〉こと,活動や参加について〈昔は車を運転してどこでも行けたが,今は何もできない〉と感じながらも〈介護保険でリースしている車いすは外食を可能にする〉等が語られたことに着目し,ICFの項目を活用によって生活機能の様相が明らかになることが示された. ICFの活用では,呼吸器疾患特有のICF Core Setsを作成したICF Research BranchのProf. Alarcos Ciezaにスーパーバイズを受け,患者の体験と既存の指標に裏付けされた質問紙の構造化の可能性について検討した.さらに,生活体験の反映について,慢性看護学の専門家との会議を行いながら尺度の完成に向けて取り組んだ. これらの結果,本研究の目的である慢性呼吸不全における在宅酸素療法患者の生活機能の評価に対する尺度開発に対し,生活体験を含めた尺度の構造化が完成した. 今後,次段階の研究として信頼性,妥当性の確認に向けて準備を進めており,本研究成果を国内外の専門誌や学会で発表の予定である.
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