下肢末梢動脈疾患(PAD)は、動脈硬化が進行し下肢に虚血症状が出現する疾患である。糖尿病者では、PADを発症する頻度が高く、下肢切断にいたる患者も多くその予防が重要な課題となっている。 本研究の目的は、「糖尿病患者の動脈硬化症による血流障害予防のためのケアモデル」を開発し、ケアモデルの有用性を検討することである。 ・平成25年度には、「糖尿病患者の動脈硬化症による血流障害予防のためのケアモデル」の介入プロトコールの作成のため、地域住民を対象とした健康相談の場において、ケア介入を行い、フットケアを手がかりにした本ケアモデルを完成させた。 ・平成26年度には、作成したプロトコールに基づいた実践的介入を行い、糖尿病患者へのフットケアの提供が、下肢の動脈硬化による血流障害を理解できるかを検討した。ケア場面の分析結果では[自分の身体を意識する][生活状況を語る][取り入れる対処を決意する]の3つのカテゴリーが抽出された。「フットケアを用いた動脈硬化症を予防するためのケアモデル」は、自分の足や体、生活に関心を寄せ、自ら語るきっかけとなり、動脈硬化症の予防につなげられる可能性が示唆された。 ・平成27年度は、パトリシア・ベナーらのケアリング理論をもとに慢性疾患看護専門看護師としての実践経験、平成25年から実施してきた先行研究結果をふまえ「フットケアを通して下肢血管障害が生じやすい身体の理解を促すケア」を洗練させ完成させた。その効果検証のために対照群のある準実験研究を行う準備を整えた。本研究の独立変数は、本ケア介入の有無とし、従属変数は、身体への関心と理解、セルフケア能力、療養行動、HbA1c、コレステロール値、血圧値、体重、喫煙本数とた。介入群には、1回60分のケアを計5回実施し、ケア介入後10ヶ月追跡調査を行っていく。療養行動の維持は、ケア介入後6ヶ月を境に難しくなるため、今後も24ヶ月かけて継続的に調査を行っていく。
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