今年度は、主に産褥早期にマタニティーブルーズ症状のある褥婦に対する心拍変動バイオフィードバックの有用性について分析した。 本調査の対象において、産褥4日目のマタニティーブルーズ得点が8点以上の高得点者(以降、マタニティーブルーズあり群)は、全体の29%と全国的な出現率とおおよそ同様であった。マタニティーブルーズあり群の平均得点は9.3±1.4点であり、マタニティーブルーズなし群の平均得点は3.3±2.0点であった(p<0.01)。マタニティーブルーズあり群のうち、産後約1か月間心拍変動バイオフィードバックを行ったバイオフィードバック群の方がコントロール群よりも、心拍数の有意な低下が認められた(p<0.05)。一方、副交感神経機能を示すHFパワーはバイオフィードバック群の方がやや高く、精神状態の指標として用いたエジンバラ産後うつ病自己評価票日本語版(Edinburgh Postnatal Depression Scale:以下EPDS)得点は、産後1か月時においてバイオフィードバック群の方がやや得点は低かったが、二群間で有意な差は認められなかった。 以上より、産褥早期のマタニティブルーズに対して心拍変動バイオフィードバックを用いることは、心拍数の低下にはつながるものの、副交感神経機能は増加傾向を示すのみであった。今回、精神状態の指標として産褥4日目には既存のマタニティブルーズの尺度とEPDSを用いた。両者の程度を比較すると必ずしもマタニティーブルーズが認められるものはEPDS得点が高いとは言い切れなかった。したがって、一過性の変化であるマタニティーブルーズの症状のみでなく、慢性化すると発症のリスクが高いと言われている産後うつ病のハイリスク対象を産褥早期よりスクリーニングし、予防的な介入として心拍変動バイオフィードバックは有効であると考える。
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