本研究の目的は、医療型障害児入所施設に虐待を受けて入所する子どもが、施設を退所して地域移行・自立するためには、どのような支援が必要であるのか明らかにすることであった。 まずは、施設職員を対象とし、職員が経験する支援における困難と子どもへの対応方法について調査を行った。その結果、職員は虐待を受けた子どもの特異的行動への対応や関係構築に困難を経験していること、経験年数が5年未満の職員は、5年以上の職員よりも子どもにネガティヴな感情的対応や距離をおく対応をしていることが明らかとなった。また、虐待を受けた子どもの行動特徴と支援について研修会を行ったところ、研修後に職員の主観的子ども理解度が高まり、それらは職員の情動的消耗感を軽減する影響力をもつことが示された。 次に、虐待を受けた子どもへの支援が機能する全体構造を把握するために、質問紙結果をベースとした聞き取り調査を行った。その結果、連携体制のもと個別的支援が行われることで子どもの肯定的変化が起こり、子どもの肯定的変化は養育者の肯定的変化を促進することが明らかとなった。養育者への支援では、外部機関との役割分担がケースに合わせて柔軟に行われることの必要性が示された。以上の結果については学会誌に掲載済である。 最終年度には、地域移行・自立支援を経験した施設職員を対象に、経験してきた困難な状況や機能した状況、課題等についてグループインタビューを行った。インタビューからは、施設退所後、新しい環境への適応が難しいケースがあること、その場合、施設職員がプライベートな時間を使って精神的サポートや直接的生活支援を行っていることが明らかとなった。その他、職員は業務を重要視する傾向があり、子どもの生活や発達についての専門的知識やスキルが不十分であると職員が認識してることが示された。これらの結果については、分析を進め学会発表及び学会誌投稿の予定である。
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