思春期の肢体不自由のある子ども6名を対象とし、アクションリサーチの手法に基づいて『ライフスキル講座』と『養育者との会議』から成る一連の教育的介入プロセスを年2回ずつ実施した。『ライフスキル講座』では、主に看護職・看護学生で構成されるボランティアとの関わりおよび勉強会を通して、子どもに思考力、意思決定力、言語的コミュニケーション力、創造力、協調性など、社会で自立して生きるためのスキルの習得を目指した。その後、ライフスキルの習得状況の評価およびその習得に影響を与えた要因を明らかにすることを目的とし、子どもの母親6名と、ライフスキル講座に継続的に参加し直接子どもと関わってきたボランティア5名を対象に、半構成的面接法を用いて面接調査を実施した。収集したデータは質的記述的手法を用いて分析した。その結果、子どもは他者の気持ちや状況を読み取り、配慮のある言動をとること、場の空気を察し、状況を判断して適切な言動をとること、見知った相手のみならず、初対面でも主体的にコミュニケーションをとれるようになること、他者に依頼したい介助内容を具体的に言語化し的確に説明すること、介助や相談を依頼する相手を自ら選択すること、理想と現実との違いを認識し、思い通りにならない現実を受容すること、健常の同世代と同等の感覚をもつことなどができるようになってきていた。また、子どもは同世代の他者と全く関わることのない刺激のない日常生活を送る中、定期的に健常の少し年上の世代・同世代のボランティアとの関わりやライフスキル講座を通して、仲間・友達関係を構築すること、その考え方や常識的感覚を直接見聞きし体感すること、どんな意見でも耳を傾けて聞いてもらえること、常に子どもが主役となり活動することで実感を伴った経験をすること、楽しいという感情に包まれた時間を過ごすことなどがスキルの習得に影響を与える要因であることが明らかとなった。
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