研究実績の概要 |
今年度は、Cr,Mn, Co, Cu, Zn, Se, Rb, Sr, Mo, Cd, Sb, Ba, Hgの測定を行った。 そのうち、母体血中Mn濃度と妊婦の血圧についての分析を行った。 【背景・目的】妊娠高血圧症候群は妊娠合併症であり、母体と胎児共に重大な負のリスクをもたらす。本研究は、妊婦の血圧と妊娠初期から妊娠末期の母体血中マンガン(Mn)濃度と関連について明らかにすることを目的とした。 【方法】病院産科外来を受診した妊娠初期の妊婦に対し、調査概要を口頭および書面を用いて説明し書面による同意を得た。対象者には、基本属性および生活習慣に関する自記式質問紙調査を行うとともに、妊娠12週、25週および36週に母体血の採取を行った。Mn濃度の測定は、酸分解ののち誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)により行った。 【結果】妊娠12週、25週および36週の全てで採血を行うことができた386名を分析対象とした。妊娠初期の血中Mn濃度は妊娠期を通して血圧と相関した(P <0.05)。妊娠中期の血中Mn濃度は正常血圧群(120/80以上)は、至適血圧群(120/80未満)と比較して有意に高かった。(12.7±3.3μg/ L,11.7±3.1μg/ L)。多重ロジスティック回帰分析においても有意な関連を示した(OR:1.150、95%CI:1.052-1.258、P<0.002)。 【結論】妊娠中期の血中Mn濃度は妊婦の血圧を上昇させる潜在的な危険因子であることを示唆する。
|