Incontinence-Associated Dermatitis(IAD)予防ケアアルゴリズムの作成にあたり、IAD発生予測因子である「尿臭」の原因を明らかにする必要があったため、失禁を有する高齢者を対象に研究調査を実施した。その結果、対象者17名のうち強い尿臭を有する者(臭気の主観的強度が「楽に感知できるにおい」以上に該当)は8名(尿臭群)であった。尿臭の有無別に、アンモニア濃度、尿培養、尿沈渣、尿一般検査、尿性状、バイタルサインズを分析した結果、尿臭群の尿pHが7.5に対し対照群の尿pHは7.0と有意に高く(p=0.021)、尿臭群のリン酸アンモニウムMg結晶の半定量値が1+に対し、対照群は0と有意に高い(p=0.027)ことが明らかとなった。これは、主観的なIADのリスク指標であった臭気にかわり、客観的指標である尿pHを指標として使用することができることを示しており、それが可能となることで、IADのリスク判断は正確かつ容易になることが推測される。またリン酸アンモニウムMg結晶は尿素分解酵素産生菌への尿路感染が原因で出来る結石であるため、尿素分解菌への感染予防・管理がIADの予防・管理手段となることが明らかになったといえる。加えて、両群間にて皮膚の状態を比較した結果、尿臭群はおむつが接触する部位に色素沈着を有している者の割合が有意に高く(p=0.015)、IADによる皮膚の炎症を繰り返している可能性が示唆された。つまり本調査においても、臭気とIAD(炎症性の色素沈着)間の関係が確認できたと判断できる。 以上から、本結果をふまえたIAD予防ケアアルゴリズムが完成した。
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