本研究の目的は、自殺に関するアルコール依存症当事者とその配偶者の夫婦関係の問題とその援助について明らかにすることである。そのために、研究①として、アルコール依存症当事者とその配偶者の精神的健康と夫婦関係との関連を明らかにし、研究②として、アルコール依存症当事者とその配偶者の夫婦関係に対する援助について抽出する。 研究①では、アルコール依存症当事者とその配偶者の自殺関連事象の実態と精神的健康の程度が明らかとなった。アルコール依存症当事者だけでなく、配偶者の自殺念慮経験率が、2008年に内閣府が行った自殺対策に関する意識調査の結果の自殺念慮経験率よりも高い割合になることがわかった。また、精神的健康の程度については、低精神的健康群の人が、アルコール依存症当事者よりも配偶者の低精神的健康群の割合が高く、また一般住民の調査結果よりも高い割合になることがわかった。以上のことから、アルコール依存症当事者はもちろん、配偶者に対する精神ケアの充実が重要であることが明らかとなった。 そして、精神的健康における影響要因として、アルコール依存症当事者と配偶者ともに、夫婦関係満足度が影響することが明らかになった。アルコール依存症当事者、配偶者ともに、精神的健康群の人は低精神的健康群の人と比較して、夫婦関係満足度が高い状況であった。そのため、今回の結果をふまえて、今後、夫婦関係を再構築、または関係を維持していくために、必要な援助を検討していくことが課題としてあがった。今後は、さらに研究②について、詳細に分析を行い、課題について明確にしていく予定である。
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