研究課題/領域番号 |
25862235
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研究機関 | 神奈川県立保健福祉大学 |
研究代表者 |
山下 真裕子 神奈川県立保健福祉大学, 保健福祉学部, 講師 (40574611)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 遠隔看護 / 服薬アドヒアランス / 精神看護 / 地域支援 / セルフマネジメント |
研究実績の概要 |
今年度はまず地域で生活する精神障がい者と支援者である訪問看護師に服薬および服薬支援に関する現状を明らかにするために調査を行った.全国の精神科訪問看護を実施する164施設の施設長にアンケート調査を実施した結果,精神障がい者への1週間の平均訪問回数は1.34回,1回の平均滞在時間は49.05分,服薬支援を行う時間は訪問滞在時間の約4割を占めていた.支援内容は,服薬カレンダー等の使用や,残薬確認,服薬指導,電話や声掛けによる内服誘導,飲み心地や内服に関する思いの傾聴など,先行研究で有効とされる支援を実施していた.そのような支援の一方で,誤薬や飲み忘れ,過量服薬,自己調整,拒薬,紛失など,適切な服薬に対する課題は依然として解消されていない現状が明らかとなった. 次に地域活動支援センターに通う146名の精神障がい者にアンケート調査を実施した結果,約9割が内服の必要性を認識し,多くが自己管理を行っていた.しかし飲み忘れや誤薬等の課題は依然として解消されず,服薬支援への高いニーズが明らかとなった.期待する支援方法は,飲む時間に伝えてくれる,飲み忘れた時教えてくれる,どの薬を飲んだらいいか示してくれる,薬に関して困ったら相談に乗ってくれる等の支援を電話等顔の見えない間接的方法で求めていることが明らかとなった. 以上の調査結果をもとに,ICTを用いた遠隔看護支援システムの設計・開発を行った.本システムは,対象者宅に配置した服薬支援ツールをインターネットを介して支援者(研究者)と繋げ,内服状況を見守るシステム,音声と点滅で内服時刻と内服薬を通知する伝えるシステム,必要時スカイプや電話等を用いて状況確認や指示,相談に応じる交流システムで構成されている.3つのシステムを活用することで,飲み忘れや誤薬,訪問頻度等現在の課題をクリアできる遠隔看護支援システムを開発した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の実施計画に当たる,地域で生活する精神障がい者を対象とした服薬の現状や服薬支援へのニーズ調査を実施し,精神障がい者が地域生活を送る中で,服薬の必要性の認知度や服薬管理の現状,内服する上での困難,具体的な服薬支援へのニーズ等詳細なデータを得ることができた.加えて全国の精神科訪問看護を実施する訪問看護師を対象とした服薬支援の現状やニーズ調査を実施し,訪問の頻度や訪問時間,服薬支援の具体的な内容,服薬支援に充てる頻度・時間,服薬支援に関する課題,期待する支援(制度,ツール,マンパワー)が明らかとなった. その結果を基に,平成26年度の実施計画にあたる,ICTを用いた遠隔看護支援システムの設計・開発に着手し,課題の解消,ニーズを反映した3つのシステムで構成された遠隔看護支援システムが開発できた. よって,順調に進展していると評価する.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は遠隔看護支援システムの暫定的試行および評価を行う. K県内の地域生活を送る精神障害者10名程度を対象にシステムを導入し,本システムの有効性,実用可能性を検証する. 研究方法は,K県内の家族会総会で,本研究参加の協力依頼をし,対象者を募る.同意が得られた対象者宅に作成した服薬支援ツールを設置し,支援者(研究者)とインターネットを介して遠隔で服薬支援を行う.支援内容は,伝えるシステム,見守るシステム,交流システムの3システムの導入とする.服薬支援ツールの内服薬を配置するマスに対象者の内服薬をセットし,対象者の服薬時刻をあらかじめ設定する.内服時刻になると音声と内服すべき薬が配置されたマスが点滅し音声と点滅で内服時刻と内服薬を通知する(伝えるシステム).服薬状況は内服薬が配置されたマスを上部に配置したwebカメラで支援者(研究者)が見守り(見守るシステム),間違えて選択した場合や飲み忘れている場合は電話やスカイプ等を使って状況確認や指示をする(交流システム).また正しく内服できた場合はマス上に文字が映し出され,正しく選択できたことを対象者が確認できる(伝えるシステム).これら3つのシステムを導入し,服薬アドヒアランス(DAI-10)の変化,本システムが飲み忘れ,飲み間違いの予防,不安の軽減,内服意欲の向上,内服の自信に役立ったかについてリッカートスケールを用いて評価する.また実際の服薬行動についても,数値化して評価する.なお介入期間は1名に対して4週間とし,本システムにおける服薬支援の有効性ならびに実用可能性を評価する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に実施した,全国の精神科訪問看護を実施する訪問看護師へのアンケート調査では,当初回収率を30%と見込んでいたが実際は20%台と若干低かったため,執行が予定より下回った.しかし,全国調査の場合起こりうる状況で,想定内である.本研究結果は平成27年度の計画を推進するために十分有効な示唆が得られ,今年度の実施計画には影響を及ぼさないと判断される.
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次年度使用額の使用計画 |
残金は平成27年度に繰り越し,希望のあったアンケート調査実施協力施設に結果報告するための印刷代および郵送料として計上する.
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