研究課題/領域番号 |
25862237
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 島根県立大学 |
研究代表者 |
松谷 ひろみ 島根県立大学, 看護学部, 助手 (10642655)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 精神障がい者 / エンパワメント / 農福医連携 |
研究概要 |
本研究の目的は、精神障がい者が園芸作業及び農作業を通して育まれた就労に関するエンパワメント並びに精神障がい者のエンパワメントを促進させる関わり方のコツを明らかし、そして、精神障がい者の精神情緒状態を把握するためのツールについて検討することである。 平成25年度は、精神科病院に入院中であり社会復帰の対象となり得る精神障がい者および医療福祉スタッフを対象に、園芸作業を通して育まれた入院中の精神障がい者が就労に移行するために必要なエンパワメントと、そのエンパワメントを高めるための関わり方のコツについて検証した。対象者29名のうち、積極的に園芸作業に参加した6名、スタッフ2名へ半構成的インタビューを実施した。精神障がい者へのインタビュー内容について逐語録を作成し、ベレルソンの内容分析の方法に基づき分析を行った。得られたデータから、園芸作業を通して育まれた就労に移行するために必要なエンパワメントは70記録単位抽出され、これらの記録単位は16カテゴリに集約された。カテゴリは、【成長への期待】〔8単位:11.4%〕、【予期不安】・【やりがい】〔7単位:10.0%〕、【満足感】〔6単位:8.6%〕、【他者との協働】・【心が穏やかになる】・【希望を抱く】〔5単位:7.1%〕、【他者との一体感】・【関心が湧く】・【他者とのコミュニケーション増加】〔4単位:5.7%〕、【責任感】・【コントロール感】・【次の課題を見出す】〔3単位:4.3%〕、【自己成長】・【他者からの評価を求める】・【自分の力の認識】〔2単位:2.9%〕であった。この結果より、①将来起こりうることを予期出来ること、②自己効力感が高められること、③他者へ関心が向くことの3点が園芸作業を通して育まれた就労に移行するために必要なエンパワメントの核となることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画当初、精神障がい者および医療福祉スタッフへのデータ収集方法としてフォーカス・グループ・インタビュー(以下FGI)を予定していたが、対象者の疾患による精神症状の不安定さや人数の関係からFGIの実施は難しく、可能な限り対象者の語りを引き出せるようにインタビュアーが注意することで個人への半構成的インタビューへ変更した場合でも目標達成には問題ないと判断し、データ収集方法を半構成的インタビューへ変更した。平成25年度収集予定のデータ収集はすべて終了し、医療福祉スタッフから得たデータを現在分析中である。26年5月中には分析を終了する見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、平成25年度の分析結果を踏まえ、農福“医”連携プログラム案を作成する。そして、農福“医”連携プログラム案を用いて、就労継続支援B型事業所に通所し施設外就労等において農作業を行っている20~50代の精神障害者10名程度および、利用者の支援・指導に当たっているスタッフ5名程度を対象として、就労支援を受けながら就労している精神障がい者が就労を継続するために必要なエンパワメントと、そのエンパワメントを高めるための関わり方のコツを検証していく。開始前に研究協力者およびその他スタッフに対して平成25年度の研究結果および農福“医”連携プログラム案を伝え、 2~3か月に1回程度、スタッフにフォーカス・グループ・インタビューを行い、効果的な関わり方や精神障がい者の変化について振り返りを行う。また、気分を把握するためのツールとしてのフェイススケールおよびその他検討したツールの有効性を、日々の記録及びデータ、平成25年度のデータ、インタビューから分析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、調査データの入力を研究者本人で行ったことや想定よりも雇用人数が少なかったことなどにより、予定していた人件費・謝金を支出することがなかった。また、学会参加時に併せて先進地視察を行ったため、予定していた旅費の支出も発生しなかった。また、データ分析の際の個人情報保護として教員業務用とは別のパソコンが必要となり、当初計画になかったパソコンを購入した。 平成26年度は、データ収集、分析を進めるための人件費・謝金、および、精神障がい者の精神情緒状態を把握するためのツールなどの備品購入費、学会発表の旅費を中心に研究費を使用する計画である。
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