ベネフィット・ファインディングとは、慢性疾患などの逆境を経験した人が、その経験によって得られたものがあったと感じることを指す概念である。精神疾患をもつ人々のベネフィット・ファインディングを促進するための効果的な介入について検討するために、これまでに実施した横断調査および縦断調査をもとに、地域で生活している精神疾患をもつ人々におけるベネフィット・ファインディングの関連要因について、さらなる分析を行い、学会発表を行った。ベネフィット・ファインディングは、リカバリーやSOC(首尾一貫感覚)、希望、精神症状などと密接に関連することが確認された。SOCのなかでは、特に有意味感が強く関連している可能性が示唆された。その一方で、1年間のフォローアップ調査においては、評価尺度スコアによって評価されるベネフィット・ファインディングには有意な変化は観察されなかった。このことからは、慢性疾患をもつ人々におけるベネフィット・ファインディングは、長い人生のなかで徐々に経験されるプロセスであると考えられ、その変化を縦断的に評価するためには、より長期間のフォローアップ調査が必要であると考えられた。さらに、ベネフィット・ファインディングを促進するための介入内容や方法について、Posttraumatic Growthなどの近接概念に関する介入研究も含めて最新の知見について文献をもとに整理し、精神疾患をもつ人々を対象とした介入方法に関する検討を行った。
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