本研究では脱水状態に陥りやすい高齢者を対象に,暑熱障害の一つである脱水状態を早期にアセスメントできる有効な部位の検討をすること,脱水状態を簡便かつ客観的にアセスメントする方法の開発をすることを目的としている。本研究では若年者と高齢者の体格を比較し,高齢者は加齢に伴い,細胞内液量の減少がみられ,わずかな水分摂取不足でも脱水に陥りやすい可能性があることを示した。 今年度は「軽費老人ホーム入所者における身体各部位の皮膚水分の特徴」を明らかにした。比較的活動量の少ない高齢者26名(男性4名,女性22名)を対象に,油水分測定機WSK-P500U(WAVE CYBER CORP社製)を用いて,右腋窩,右手首内側,右肘関節内側,後頚部,右足首内踝の5か所を測定した。対象者は66歳から94歳で平均年齢81.7±7.2歳であり,介護度は要介護3(1名),要介護2(2名),要介護1(5名),要支援2(3名),非該当(11名)であった。皮膚水分の平均値(最小値-最大値)は右腋窩65.6±19.2(30-96),右手首内側51.7±11.1(26-70),右肘関節内側55.8±14.7(4-72),後頚部70.0±10.4(48-85),右足首内踝32.7±16.4(5-73)であった。皮膚は加齢変化に伴い,表皮における角層水分保持能は低下することで乾燥し,乾燥度は頚部と比較すると体肢遠位部,特に下肢が高いといわれており,本研究においても足首内踝の皮膚水分は他の部位と比較しても少なく,同様の結果を得た。また比較的水分保持能のある後頚部を脱水状態を早期に発見する観察部位のひとつとして使用できる可能性があることが示唆された。
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