研究対象者は研究協力病棟に入院する要介護高齢者に多い「過活動膀胱が疑われる頻尿・尿失禁をもつ高齢女性とその家族介護者」にターゲットを絞り、3例に対し入院中に諸ガイドラインで示されている排尿障害の推定方法を用いて排尿障害のタイプを推定した上で、退院後の半構成的面接を実施した。3例の高齢者・家族介護者から得られたデータを質的帰納的に分析し、その結果、退院後に高齢者と家族介護者が在宅で難渋しているのは特に排泄関連の介護であり、過活動膀胱が疑われる頻尿・尿失禁の場合、次の3つが特徴的な困難を感じる場面として抽出された。 ①トイレへ誘導する際の移動に時間がかかり、トイレに辿りつく前に尿失禁してしまうこと ②蓄尿された状態で排尿するタイミングを予測することが困難であり、苦労して頻回にトイレに行っても排尿がないことがあること ③高齢者本人と介護家族間で排泄に関しての話題が挙げづらく高齢者と家族間で心理的葛藤があること 現在これらの特徴的な困難を感じる場面に対して有効な考え方や介護方法について、過活動膀胱および頻尿・尿失禁に焦点を当てた排尿ケアガイドに挙げる情報の整理をし、修正している。また、今後もより多く対象者を増やしていき、入院中に過活動膀胱が疑われる頻尿・尿失禁をもつ要介護高齢者とその家族介護者に退院後の面接実施を継続していく。排泄や介護に困難に感じる具体的場面を増やし、排尿ケア習得のプロセスモデルを作成したうえで、排尿ケア習得モデルに基づいた排尿ケアガイド(過活動膀胱、頻尿・尿失禁のある方へ)と題して、病棟で退院支援を行う看護師が要介護高齢者と家族介護者に対して活用頻度を高くできるよう、一般化に向けて修正を行い、学会等で公開する予定である。
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