研究対象は、精神科病院3施設の精神療養病棟6病棟で勤務する看護師61名、保護室を使用している患者10名であった。研究者が看護師全員にRapp & Goschaのストレングスモデルを基盤としたストレングスモデルに基づくアセスメント方法の学習会を実施した。学習会終了後、研究者が2017年8月から2018年3月にかけて看護師にグループインタビューを実施し、ストレングスモデルを基盤にしたケースアセスメントおよび介入方法の検討を行った。 保護室での隔離期間が長期化している患者8名(ストレングスモデル導入前の延べ隔離時間1585~3634時間、ストレングスモデル導入後の延べ隔離時間1130~3502時間)に限定して分析を行った。隔離期間が長期化している患者8名のうち、ストレングスモデル導入後に延べ隔離時間が減少した患者は5名、研究終了時点で隔離解除の状態を維持できていた患者は3名であった。導入前群が平均2830±783時間、導入後群2461±835時間であり、対応のあるt検定で前後比較を実施したが隔離時間に有意な差はみられなかった(t=0.461)。 看護師の認識では、看護師は自身の関わり方について内省を深め、強制や指示など管理的な対応に偏りがちであったことを認めていた。看護師は患者を「なだめる」「和らげる」といった許容する関わりへと変化させ、具体的に患者の要望やニーズを充足するための創意工夫を継続しようとする姿勢が生まれたりしていた。しかし、患者と会話が成立しない状況や衝動的な欲求をコントロールできない状況で、患者のストレングスを捉えることができても、看護に活用することは困難であると捉えていた。 看護師の感情においては、患者のストレングスや人間味を掘り起こして看護介入に反映させていくプロセスが、看護師自身のストレングスを発見することにつながり、強みに着目する楽しさや意義を実感していた。
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