研究課題/領域番号 |
25862248
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
梅田 奈歩 中部大学, 生命健康科学部, 助教 (50582524)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 地域高齢者 / 転倒恐怖感 / 対処方略 |
研究概要 |
本研究はLazarusのストレス-コーピング(対処)理論を用いて、転倒恐怖感が老いの受容をめぐるストレス現象であるという仮説に基づいて、地域で生活する高齢者が転倒に脅威を抱きながらも、いかにして自ら転倒に対処しようとするのかという転倒の対処方略形成プロセスを明らかにすることを目的としている。 平成25年度は地域高齢者が転倒に対して行っている対処方略の内容について、自己効力感の観点から明らかにすることを目的に、地域在住高齢者に対してインタビュー調査を実施した。対象者は72~90歳までの男性3名、女性8名である。60歳以降の転倒経験者は6名であり、このうち2名は1年以内に転倒していた。インタビュー内容から逐語録を作成し質的帰納的に分析を行った。現在は分析途中であるが、地域在住高齢者における転倒の対処方略は転倒予防行動だけでなく、転倒に対する考え方の変容に関する内容も含まれていた。これらの結果はLazarusが示した情動焦点型対処と問題解決型対処の両方が同時に存在していると考えられた。また、高齢者が対処方略を遂行することで期待している結果は、単に転倒を回避するということだけではなく、転倒に煩わされない生き方に関する内容が含まれていた。以上の結果から、高齢者の転倒は単に「予防」という視点ではなく、「対処」という視点を導入することにより、転倒に対して過度に恐怖感を抱くことなく高齢者自身が自ら向き合うことができる可能性が示唆された。 また、平成25年度は平成26年度の計画を前倒しして、インタビューデータの分析結果を参考にして転倒の対処方略項目を独自に作成し、地域在住高齢者2000人を対象に質問紙調査を実施した。平成26年度はこれらの結果から転倒の脅威と対処方略の関係性、精神的健康への影響について検証していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は地域高齢者が転倒に対して行っている対処方略の内容について、自己効力感の観点から明らかにすることを目的とした。当初は、平成25年度にインタビュー調査を行い、その内容を質的に分析し、翌年度にそれらの内容から質問紙を作成し、郵送法による調査を行う予定であった。しかし、インタビューデータの質的分析にはさらに時間を要することから、研究計画を以下のように修正した。インタビューデータによりすでに分析が終了した内容をもとに先に質問紙を作成し、平成26年度に実施予定であった質問紙調査を前倒しで行った。インタビューデータの分析は質問紙調査と並行して継続して行うこととした。研究全体を通しては、計画した内容に大きな変更はなく、実施状況が遅延していることはない。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度はインタビューデータの質的分析を進める。またそれと同時に質問紙調査により得られたデータを統計解析による分析を行っていき、分析結果の整合性を確認していく。転倒の脅威と転倒の対処方略の関係性、および精神的健康への影響を明らかにし、転倒恐怖感を老いの受容に伴うストレス現象としてとらえることの有効性を検証していく。これにより現行の転倒予防対策とは異なる新たな視点から高齢者の転倒対策を提言していく。
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