地域高齢者の健康寿命の延伸を目指して、地域の行政保健師の役割には、1次予防(健康増進)、2次予防(虚弱、つまりフレイル状態にある高齢者の把握と介入)、3次予防(機能の保持、改善、リハビリ)対策を推進する効果的な方法による地域介入が求められている。本研究では、地域在住高齢者のフレイルに関連する要因を、社会的側面を中心に検討を行った後、3年後要介護に関連する要因を、縦断的に要介護の重症度別で検討を行った。調査は中核都市H市に居住している高齢者を対象として、自記式郵送質問紙調査を実施した。分析の結果、性別(女性)、高年齢、疾患有無(有)、市内居住年数(20年未満)、就労状況(無)、社会的活動(無)がフレイルにそれぞれ独立して有意な関連性を示した。さらに回答者の罹患疾患を検討したところ、男性では脳卒中や生活習慣病、女性では関節疾患、骨粗鬆症の割合が有意に高く認められた。フレイル群においても同様であった。結果より、健康長寿の延伸を目指した地域づくりを推進する際には対象者の性別等属性に沿った方法でアプローチすること、および地域全体のソーシャルキャピタルの醸成が介護予防にとって重要であると考えられた。これらの結果を踏まえて、ソーシャルキャピタルについてさらにその下位概念に踏み込んだ調査検討を実施し、個人レベルのソーシャルキャピタル因子と健康との関連性を明らかとし、公衆衛生看護活動の介入方向性に対する示唆を得た。これらの研究成果は老年学、老年医学関連では古くから重要な論文を掲載してきたArchives of Gerontology and GeriatricsおよびGeriatrics & Gerontology Internationalに掲載された。また、世界一の超高齢社会である日本における保健師の役割についての総説を海外雑誌へ発信した。
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