研究実績の概要 |
平成27年度の研究目的は,前年度調査より抽出した大都市部の地域包括支援センターに所属する保健師・看護師(以下,保健師等)が虚弱な一人暮らし高齢者に行う支援内容(以下、支援内容)を精選し確定させることである.前年度調査の事例分析から抽出した支援内容を再度精査し、56項目の支援内容案を作成し,それらについて保健師等が担うことへの同意の程度をコンセンサスメソッドであるデルファイ法(Politら,1987)を用いた質問紙調査により測定した. 3大都市圏(首都圏・東海圏・関西圏)の特別区および政令指定都市の委託型地域包括支援センター735施設に所属する保健師等各1名を対象に2回の無記名自記式調査を実施した.第1回調査時に第2回調査協力意向を確認する書類を同封し,返送のあった81名に第2回調査を実施した.第2回調査時には第1回調査の結果を添付しフィードバックを行った.第1回調査は143名から回答を得た(回収率19.6%).第2回調査は81名に調査票を配布し,73名から回答を得た(回収率90.1%).デルファイ法での合意基準に基づき,把握の段階では【本人の状況の把握】,【取り巻く環境の把握】,【認識と意向の把握】の3群17項目のうち14項目が,介入の段階では【本人の自立を支える関わり】,【見守り支える環境づくり】の2群39項目のうち23項目の計37項目について合意が得られた.これらの結果より,保健師等が潜在的なニーズを抱えている一人暮らし高齢者に対して多様な支援を実施している実態と自身の職務認識との間でジレンマを抱いている可能性が示唆された.ゆえに地域包括や委託元である市町村は保健師等のこうしたジレンマの表出を促し,共有し,地域包括における保健師等の役割を整理していくことが必要であると考えられた.
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