本年度の目的は、老人福祉センターを利用するひとり暮らし高齢者の見守りネットワーク形成のための組織作りであった。 昨年度の面接調査の結果、利用者仲間同士の交流の深まりに対してニーズが見いだされないだけでなく、消極的な態度が明らかになった。 以上のことから組織作りの前に老年期のどのような体験がそのような消極性につながるのかを把握したうえで、組織作りの方法を検討する必要があると判断し、組織作りの参加協力候補者に対し、年齢を重ねてきたことと、仲間との交流についての思いや体験を自由に語ってもらった。その結果、《親しみを持つことに感じるうしろめたさ》《他者を世話するエネルギーの減退》《生活の個別性があるからこそ声をかけない配慮》《近所づきあいの延長で深まらない関係》など趣味活動の場で仲間との関係に対する思いが語られた。 組織作りにおける討議の提案は、「自覚はなかったが趣味活動の場を癒しの場として求めていると感じる」、「高齢者が集まる場には、年齢がもたらす独特のやさしさがあり癒しになる」、「癒しを求めてセンターに出掛けることが健康につながる」など老人福祉センターが健康にもたらす影響についてであった。このように老人福祉センターの活動を振り返る機会をもったことで、「通える人には健康をもたらすが、通えないときには何らかの支援が必要」など、外出が困難になった時にもセンターの活動で得られた健康への効果を求めるニーズが表出されていた。
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